ラヴィーレ弁天町で取り組んでいる「持ち上げない介護」がNHK(日本放送協会)で紹介されました!
日々の健康づくりに役立つ情報番組、NHK「きょうの健康」
NHK総合テレビ「先どり きょうの健康」(2/26放送)とEテレ「きょうの健康」(2/28、3/7放送)の各番組にて、「さよなら腰痛 『腰への負担を軽減!ボディメカニクス』」と題し、ラヴィーレ弁天町で取り組んでいる「持ち上げない介護」が紹介されました。
取材の背景
介護現場における労働災害の要因の多くは「腰痛」。移動や入浴、排せつ介助などの場面で、介護スタッフが腰に力を入れてご入居者さまを持ち上げる動作を要する機会が多いからです。
そのため、当社では東京大学医学部附属病院 22世紀医療センターの特任教授である松平浩先生のご協力により、社内外の研修やイベントのなかで、腰痛予防の講習会を開催してきました。松平先生は、今回放送された「きょうの健康」の番組内でも、介護における腰痛のメカニズムとその対策についてご紹介されています。
また、当社の『持ち上げない介護』研修は、座学から実践まで約半年にわたる長期プログラムで、腰に負担をかけない介護技術や福祉用具の使い方などを体系的に指導しています。そのなかでNHKが注目したのは、「重心を低くする」「相手に自分を近づける」などの原則を用いたボディメカニクス。介護中である番組の視聴者が、腰痛予防と安心・安全な介護を両立できるテクニックを身に着けご自宅で行えるよう、ラヴィーレ弁天町の介護スタッフが実践。その様子を撮影・放送いただきました。
ベッドから車いすへ移乗介助するときのボディメカニクス
今回は、ラヴィーレ弁天町に勤務する理学療法士の児玉さんが介護者役に、ケアスタッフの北野さんがご入居者さま役になり、ベッドから車いすへの移乗介助を実践しました。
※実際の介護では、ご入居者さまお一人おひとりの心身状態や身体機能などの違いにより、援助方法は違いますが、ここでは介護者による声かけや体を軽く支えれば立ち上がることができるご入居者さまを想定した援助方法の一事例として、ご紹介しています。
ボディメカニクスの8原則
①支持基底面を広げる
→ 介護者は足を大きく開いて立つ
身体を支えるため床と接している部分を結んだ範囲を支持基底面といい、この部分が広いと身体の姿勢が安定します。
②ご入居者さまの体を小さく(コンパクトに)する
→ 手を胸の上に置き、両膝を曲げる
身体がベッドなどに触れている部分を小さくすると、摩擦力が減少し介助に必要な力も少なくて済みます。
③水平移動
→ 右側臥位(横向きに寝た体位)になってベッドの端まで移動
上に持ち上げると重力がかかって負担が大きくなるため、水平方向に移動していただき、移動先までの距離を縮めます。
④てこの原理を利用する
→ ご入居者さまの腰を支点にして、足を下ろしながら上半身を起こす
ベッドでの起き上がり介助では、ご入居者さまの腰を支点として、足をベッドから下ろしながら上半身を起こすとテコの原理が働き、少ない力で援助できます。
⑤重心を近づける
→ ご入居者さまと介護者の距離を近づける
二人の重心を近づけることで安定性が増して移動に必要な介護者の力もしっかり活用できるため、ご入居者さまも安心して移乗ができます。
⑥重心を低くする
→ 介助者は腰を落として重心を下げる
身体の重心が低い位置にあると倒れにくくなり、ご入居者さまの体調変化などで突然倒れそうになった時でも、しっかり支えることができます。
⑦身体をひねらない
→ 車いすに座りやすい体勢になるよう、ご入居者さまと一緒に介護者も体を回転する
介護者が身体をひねると不安定な姿勢になり、腰にも負担がかかります。ご入居者さまと一緒に身体を回転するなどして姿勢を変え、膝の屈伸を利用しましょう。
⑧大きな筋肉をつかう
→ ここではお尻と太ももの筋肉を意識してつかう
腰や腕などの筋肉だけに頼らず、お尻や太ももなどの大きな筋肉も一緒に活用することで、身体への負担が軽減できます。
福祉用具を活用した移乗介助
ボディメカニクスなどの介護技術を利用した腰痛予防のほかに、福祉用具の活用方法についてもご紹介しました。
今回活用した福祉用具はスライディングボードです。
お尻の下にスライディングボードを差し込み、その上を滑るようにしてベッドと車いすとの間を移乗できるため、立ち上がりに不安のある方でも安全に利用することができます。
スライディングボードを使った、ベッドから車いすへの移乗手順
①車いすの位置をベッドに近づけてアームレストやフットレストを動かし(外し)、ご入居者さまにベッドの端へ座っていただきます。片側のお尻を少し浮かせながら、スライディングボードの端を差し込み、その反対側の端を車いすの座面にセットします。
②ベッドの高さを車いすの座面より少し高くなるよう調整。ご入居者さまが前後左右に傾いて転倒しないよう、車いすのアームレストをつかんでいただいたり、上半身を介助者がいる方へ少し前傾していただいたりして、姿勢を整えます。
介護者は足を大きく開き、腰を低くして安定した姿勢を保ちながら、片方の手(下の写真では右手)をご入居者さまの肩や脇の下付近に手を当てて支え、もう片方の手(下の写真では左手)を骨盤に当てながら、車いす側へ滑らせるようにゆっくりとやさしく押します。
③ご入居者さまを車いすの座面に移動し終えたら、片方の手(下の写真では右手)で支えながら、ゆっくりスライディングボードを抜いていきます。そして、車いすのアームレストやフッドレストを元に戻して座位姿勢を整えます。
「持ち上げない介護」実践後の変化
介護者役として実演してくれた児玉さんに、NHKが単独インタビュー。
児玉さんが学校を卒業して病院へ就職した当時、ボディメカニクスや福祉用具の活用などの知識や経験がなく、しばらくして腰痛に悩む日々が続いたそうです。しかし、当社へ入社後、「『持ち上げない介護』の研修により腰痛もなくなり、ご入居者さまへの安全・安心な介護をホーム全体で提供できています」と、話してくれました。
当社サイトをご覧いただき腰痛にお悩みのみなさま、ボディメカニクスや福祉用具の導入を検討してみてはいかがでしょうか?