プライベートサービスを活用して富士山へ行こう!@そんぽの家 中村公園
そんぽの家 中村公園では、プライベートサービスを活用してご入居者さまの「願い」を叶えました。
それは「富士山に登りたい」という願いでした。
今回の「SOMPOケア WATCH!」では、この「願い」の実現にむけた「富士山計画」と、それに取り組んだご入居者さまと担当したスタッフの二人三脚の様子を、詳しくご紹介します!
主役のお二人
ご入居者さま:小川 昭二 (おがわ しょうじ)さま 97歳
担当スタッフ :近藤 かずみさん (介護職員)
「富士山計画」の内容
経緯・背景
・小川さまはご自身でできることが少なくなり、だんだんと後ろ向きな発言や表情が見られるようになりました。 近藤さんはある意味「人生へのあきらめ」のようなものを感じるようになりました。
・そこで近藤さんは、小川さまに現在どのようなご要望があるのか。その願いを少しでも叶えられれば、小川さまも少しは前向きになるのではと考えました。そして何度かお話を伺うなかで、「実は富士山に登りたいんだ」という想いを引き出すことに成功しました。
・この想いをくみ取り、小川さまの成功体験を通じて、再度ご自分に自信を持ってもらうべく、「富士山計画」を実行することしました。
富士山への道(ステップ)
実現に向けての課題
「富士山計画」を実現するためにはいくつかの課題がありました。
・長時間の移動にかかる体力的な問題
・現地の環境
・ご家族さまの思い
・食事量の低下
これらを解決するため、小川さまと近藤さんはステップを一つずつクリアしていきました!
第一歩
まず山頂への登頂は難しいので、富士山五合目まで行くことを決定。
第一歩として、長距離移動となるので現在使用している車いすではなく、リクライニングができる車いすを試しました。
小川さまは「これの方が楽だわぁ。これに乗って富士山いくぞー!」とはりきっておられました。
富士山に行くと決まってから、生活に対して前向きな発言や表情が見られるようになりました。
第二歩
長時間移動に耐える体力をつけるため、「毎日筋肉つけるぞー!」と車いすのフットレストで筋トレを開始。
色々試しましたが、フットレストの重さ、持ちやすさが一番やりやすいとのことでした。
「毎日右左、10回ずつ頑張る」と気合十分。その間も怪我をされないように近藤さんが見守りをしていました。
第三歩
富士山へ行くには、どうしても長時間車に乗る必要があります。そのため、車の乗り心地を確認。
また、できるだけ安楽な姿勢で疲労感なく移動できるように工夫も。シートと腰の間が空いてしまうので、近藤さんがいつも使用されているクッションで隙間を埋めました。
小川さまも「この方が楽だね。行くぞー!」と張り切っておられました。
一方ホームでは、実際に現地への下見を行い、移動ルート・休憩箇所・目的施設の環境などの確認を実施しました!
第四歩
往復約10時間の車移動や屋外での移動を負担なく行えるかの確認のため、木曽三川(きそさんせん)公園まで少し遠出を実施。ここではタワーに登り、綺麗な景色を堪能しました。
4~5時間の外出でしたが、小川さまには少し疲労感がありました。
近藤さんは、富士山に向けて再度リクライニング車いすの選定、車での安楽な姿勢での車移動になるよう、検討を重ねました。
小川さまも「筋肉つけないと!」と毎日筋トレに励んでおられました。
また、ホームのスタッフが旅のしおりや応援旗を作成したり、小川さまと一緒に当日の晴天祈願(てるてる坊主づくり)を行うなど、ホームをあげて盛り上げを行いました。
小川さまはしおりを手に「楽しみだなぁ」とずっと眺められていました。
いざ、富士山へ!
出発は早朝。スタッフが作成した応援旗を手に誇らしげに記念撮影!
片道4時間を超える長旅ですが、お疲れのご様子は見られません。また、途中休憩のPAではお食事とテラスからの駿河湾の眺めを存分に堪能されました。
そしてついに富士山五合目に到着!
この日は霧に包まれ、絶景とはなりませんでしたが、幻想的な雰囲気でした。
霧模様の中、目を凝らし「富士山、御殿場口、新五号目・・・」と石碑に刻まれた文字を食い入るように見つめ、何度も呟かれながら大粒の涙をこぼされておられました。
小川さま、ご家族さまの声
小川さま
「本当に来れてよかった、ありがとう、ありがとう!」
「もう一度晴れた日に富士山に行かないかんわな。再度、挑戦してみせる!!」
ご家族さま
●行く前「体力面で心配ではありますが、ぜひ本人の希望を叶えるために、気を付けていってもらいたいです」
●行った後「本当に行けたんだね!お父さんお疲れさま!スタッフの皆さんも本当にありがとうございました!」
「不安はあったが、こんな笑顔が見れて良かった」
近藤さんへのインタビュー
介護保険サービス上では実現し難いご希望も、プライベートサービスを活用することによって入念に計画、準備の上でプランを練り、実現することができました。
今後もご入居者さまに寄り添い、ご入居者さまにとって何が大切であるのかを紐解き、残された時間のなかで「何かを成し遂げる」ことへの助力ができるよう努めていきたいと思います。
ホーム長へのインタビュー
そんぽの家 中村公園の宮本ホーム長に今回の「富士山計画」について、詳しくインタビューしました!
Q:「富士山計画」をプライベートサービスで実現できた要因は?
ポイントは「アクティビティの有料化」について、移行までのスケジュール・アクションを綿密に計画し、実行したことだと思います。
・5月に職員へ説明しました。まずはベテラン職員数名に、「ご入居者さまの願いを、プライベートサービスというツールを使って叶えてさしあげたい」ということを丁寧に話しました。
・そこに同意してくれた職員から、ほかの職員に話をしてもらうと同時に、私からカンファレンスや個別面談を通じて説明をしました。これによってまず職員全体でプライベートサービス活用=アクティビティの有料化の合意を得ました。
・その後、6月の運営懇談会でご家族さまに説明し、同時期にご入居者さまにも説明しました。実は運営懇談会に先んじて、前倒しでできるのではと思う数名の方にお話しし、プライベートサービスを開始していたので、運営懇談会ではほとんどの方に同意していただきました。
・今回の小川さまのご家族さまには次のような説明をしました。 今回の費用については、富士山へ行く単体の費用ではなく、それまでの準備行程(体力を含めたお体の状態の確認をはじめ、懸念とされていた姿勢の保持や嚥下能力などへの対策など)も含めた費用であること、つまり「富士山計画」全体の費用であることを説明し、ご同意をいただきました。
Q:全国のホーム長のみなさんへのアドバイスはありますか?
プライベートサービスとは「ご入居者さまの大切な願いを叶える貴重なツール」だと思います。ホーム長自身がこれを信じて、その熱意を職員たちに伝えること。これである程度は職場での体制を整えやすくなるかと思います。
事実、プライベートサービスの本質に迫った事例(感動事例)を行うと、それを行った職員の喜びとなり、自信になります。これは間違いないです。
そしてこれらの取組みが、二つ、三つと続いていくうちにそのような気持ちが職員間に伝播していくのではないでしょうか。
「ご入居者さまの喜びが職員の喜びとなる」。職員の働き甲斐(エンゲージメント)アップにもつながりますし、ひいては離職予防にもつながります。そんな最強のツールがプライベートサービスだと思っています。各ホームで多くの感動事例を作れるよう、一緒に頑張っていきましょう!